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俺たち家族

  • Posted by: 涙脆い管理人
  • 2011年10月 5日 15:15
  • 家族

俺と弟、おやじ。
これが俺の物心ついた頃からの家族だった。
かあちゃんがいない理由は小学生の時になんとなく。
かあちゃんの親がおやじに額を畳にこすりつけるような詫びをしにやってきたのは知っているが、それ以上は知らない。

ていうかどうでもよかった。
トラック乗りのおやじもいつ家に帰ってくるのかわからん男だったから、いない時はじっちゃんのアパートに、いる時は3人で家に、という具合だ。

じっちゃんとこと違うのは、うちの方が雨漏りがたまにするくらい。
大した違いはない。

「兄弟一致団結して」というのは嘘八百。
喧嘩は絶えず。
おやじがいてもいなくても関係なく、殺伐とした兄弟だったように思う。

そんなある日、おやじが土日2日間休みが取れたからと言う。
そしておもちゃ屋につれてってやると言う。

「おもちゃ屋かよ、別に欲しい物なんてねーよ。」

と思ったが口には出さない。
弟も弟で、興味ない様子。
果たして休日を有意義に過ごせるのだろうか?

日頃薄汚いおやじが朝から床屋に行った。
俺と弟はじっちゃんの家に、前もって用意してもらった新しい服を取りに行った。
3人が合流したのは10時30分。
こぎれいな3人に汚い黄色の軽自動車で向った。
到着。

とりあえず昼を食って弟と距離を保って歩いていると後ろを歩いていたおやじがいない。

「いねーじゃねーか、おやじが迷子になるなよな。」
「そうだな。」

弟と意見が合った。
探していると、見つかった。
ボードゲームのコーナーにいる。
しゃがみこんで何かを手にしている。

「将棋セット」

駒と折りたたみの板のセットだ。
将棋?
なんで将棋なんだよ、と思った俺。

とりあえず、俺はその後、学校で知ってるやつに聞いてメモして家に帰った。
弟はとっくに将棋のことなんか忘れてテレビを見ている。
嫌がる弟に強制的にルールを覚えさせ、ひとまずやってみた。
3分で終わった。
勝負がついたからではない。
つまらんくなって弟が駒を投げたからだ。
その日から将棋セットは押し入れの奥へ行った。

今日は喪主である俺がいろいろと動いた。
身内もほとんどいない俺たち家族だが、盛大に行いたいとの俺たち兄弟の考えで、おやじにとって満足できる出来映えだっただろう。
弟は仕事先の海外から家族と共に、俺は離婚した1ヶ月後にその日を迎えた。
おやじは体を壊したのが3年前、寝たきりになっってしまったのが半年程前だ。
痴呆?みたいなものにもなっていたらしい。
苦しまずに逝けたのが幸せか。

棺を前にして俺と弟は話しをした。

「あの時のこと覚えてるか?将棋セット」
「覚えてる。おやじ、嬉しそうだったな。」

急に俺は、探して見たくなって押し入れを探した。
すぐ見つかった。
弟と一緒に箱から開けてちょっとやってみようかという話しになった。
駒を並べ終え、始まって10分ほどした時、ヘルパーのE子さんが立ち止まったままこちらを見ていたのに気がついた。
E子さんにはおやじのことで本当に世話になった人だ。

「あ、どうかなさったんですか?」

俺は聞いた。

「お父さま、今年の初め頃でしたかしら、その駒を握って涙を流しながら、仲良うしろよ、仲良うしろよ、とおっしゃっていたもので・・・。」

みるみるうちにE子さんの顔が紅潮している。
目の前の弟は下を向いたまま動かない。
俺は、箱の中に入っていたおやじが自分で鉛筆で書いた駒の動き方のメモを見ながら泣いた。

おやじ・・・。

うまく書けないが、これが俺たち家族でした。

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